Ⅰ)薄着で育だてよう アレルギー体質のヒトは、『乗り物酔いをする』とか『風邪をひき易い』等がよく認められ、環境の変化とりわけ温度や気圧が急に変わったときなどに体調を崩しやすいものです。そのため厚着になったり、過保護になりがちです。ヒトは本来、環境の変化、暑い寒いを皮膚で感じて、それに応じて毛穴をすぼめたり、発汗して、体内をコントロールしています。ところが、厚着をしていると、皮膚のセンサーが働らくことが難しくなります。その結果、環境の変化についていけづ、風邪をひき易くなったりします。でも、こういった症状は、自律神経のアンバランスによるものと考えられます。これを克服する方法として、水かぶりや乾布マサツが行われています。温度差や物理的刺激を皮膚に与えることで、気道粘膜その他の内蔵の自律神経バランスを整え、免疫系や内分泌系を活性化しようとするものです。短期間で効果が期待できるものではありませんが、日々習慣的に行っているうちに、気がつくと『うちの子は最近風邪ひかないね』といった具合になることでしょう。 |
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Ⅱ)食事内容に気を配る また、海藻類やシソの実、えごま等に多く含まれるαーリノレン酸もアレルギー体質を抑える作用があります。 さらに、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(トコフェロール)、カロチノイド、フラボノイド、グルタチオン、フィチン酸などは、野菜に豊富に含まれ、これらにもアレルギー炎症を抑える作用が確認されています。亜鉛、銅、マンガン、セレンなどの微量元素もアレルギー炎症を抑えるのに必須です。 以上から、現在社会で推奨すべき一皿の内容は、2分の1に野菜、4分の1に糖質、残り4分の1に蛋白質を盛りつけた一皿です。野菜と魚介類をたっぷり使った食生活を子どもの頃から身につけることは、アレルギー予防だけでなく生活習慣病の予防に繋がります。参考:(食物アレルギーの予防) |
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Ⅲ)スキンケアをしっかり 皮膚には、外界から身を守るという重要な働きがあります。アトピー性皮膚炎や赤ちゃんのでは、皮膚の角質層のバリア機能と水分保持機能の異常が認められ、アトピー皮膚炎や赤ちゃんの皮膚トラブルにおける重要な発症・悪化因子の一つと考えられます。 アトピー性皮膚炎発症の予防として、新生児期から保湿剤でスキンケアすることで、その後のアトピー性皮膚炎の発症率の低下することも報告されています。 お母さん、お父さんや赤ちゃんの兄弟にアトピー性皮膚炎があったり、皮膚が弱い方がいる場合には、発症前からスキンケアを丁寧に行うことが、赤ちゃんの皮膚の健康を保つだけでなく、その後のアレルギー症状の発症や軽症化に、とても大切です。 |
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Ⅳ)腸内細菌叢をアレルギーを起こしにくい方向に保つ 最近注目されているのが,免疫機能と腸内細菌叢の関係です。ヒトの体の中で,最大の免疫器官である腸の状態が,その人の免疫機能つまりアレルギー体質に影響することが判ってきました。いわゆる乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が優位なときには,免疫系をTh1優位に向かわせ,アレルギー反応を起こし難くするだけでなく老化や発ガン抑制にも繋がると考えらています。 |
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Ⅴ)禁煙 アレルギー予防の立場からだけでなく、妊婦の喫煙は禁忌です。父親や祖父母など同居者による受動喫煙も胎児への影響が大きいことが判ってきました。流産、死産の原因だけでなく、SIDS(乳児突然死症候群)、低身長の原因でもあります。低出生体重児(=出生体重が2500グラム以下の赤ちゃん)、早産児、胎児低酸素症など未熟児や低出生体重児で生まれたことが、アレルギーの病気への危険因子の一つでもあります。アレルギー体質への直接的な影響としてIgE抗体産生を増加させることが考えられています。 |
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Ⅵ)ダニ・ホコリ・ハウスダストおよびシックハウス対策 今繁殖しているダニを一掃できても、同じ環境をつづけるなら、数ヶ月で元の木阿弥です。ですから、じゅうたんを剥がしたり、生活湿度を下げるなどライフスタイルの変更が不可欠です。公衆学的な検討から①気密性の高い住宅。②一人当たりの生活スペースが狭い。③じゅうたん、カーペット敷き。④室内ペット飼育。⑤喫煙者あり。のような環境でダニ感作が助長されることが解っています。生活環境・ライフスタイルの改善が必要です。
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Ⅶ)ペットの飼育に注意 癒しの流行と相まってペットセラピーが話題を呼び、ペットブームはますます過熱化しています。一方ペットに寄生するイヌ・ネコ回虫やパスツレラ症,オウム病などの寄生虫症の増加も指摘され、餌の与え方など適切なペット飼い主関係を保つ必要性が叫ばれています。 アレルギーとの関連では、イヌやネコ等の動物関連物質にはアレルゲン性が強いものが多く、1か月程度の短期間の刺激でも、それらに対するアレルギーが成立し得るものと考えられます。1歳以下の赤ちゃんのアトピー性皮膚炎患児のうち23.8%、約4人に1人はネコやイヌのアレルゲンに対する抗体を持っていました。中には里帰り分娩のためわずか1か月足らずの間に実家でのネコやイヌによって抗体ができあがったと考えられる赤ちゃんも経験されました。また、飼っていたハムスターに咬まれアナフィラキシーショックを起こし、病院に担ぎ込まれた子どもが相次ぎ話題となりました。このように最近ではペットもうさぎやモルモット、プレリードッグなど多種にわたり、接し方もますます濃厚になり、それに伴うペットアレルギーの増加が心配されます。 ペットを室内で飼育することは、その動物の毛やフケ、唾液などがアレルゲンとして働くだけでなく、ダニやカビの栄養源となり、ダニやカビの繁殖も促します。家族にアレルギーの病気のある家庭では、飼うべきではありません。現在飼っているペットをすぐにどうこうすることは難しいことですが、室内よりは庭先、屋外へと移して飼育したり、ゆるす限り頻繁にシャンプーやグルーミングをするようにして、少しでもアレルゲンを減らすようにしましょう。また、えさの後始末を含め、まめに掃除をしましょう。 ペットアレルギーに関しては、ペット飼育が返ってその後のアレルゲン感作に予防的に働く可能性を示す研究報告が海外でいくつか報告されており、今後の研究が期待されますが、現時点ではその他のアレルゲン同様できるかぎり身の回りから当該アレルゲンを少なくすべきと考えます。 |